FIVE COLOR[S]INK ⼀級建築⼠事務所|⼤阪市⻄区北堀江

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【住宅設計   けんとうの巻】

大阪市の設計事務所が出す空間のアイデア 京田辺の住宅

スキップ1とスキップ2が揃って完成しました。
このブログで何度も紹介してきましたが、2020年の春から計画を始め
そしてこの2022年の春を前にいよいよ工事完了をみました。
途中にはウッドショックという木材不足問題や半導体不足問題と
今も続く材料不足による停滞を経験し、2年かけての完成。
すでに2棟とも住まいとして使われています。



奥がスキップ1 手前がスキップ2


外観からは分かりませんが、内部は1階から中2階、そして2階へと
段々に続く名前の由来となるいわゆるスキップフロアを展開。
空間を楽しむ人のための住まいとしました。

どちらともご飯を食べる場所と集まってくつろぐ場所とで
40センチの段差を設けています。
その段差によって空間に動きが生まれ、ドキドキ感とワクワク感のある
生きた場所となっています。


  
左ができたてのスキップ2(くつろぐ場所の上に吹抜け)


違いは階段の位置と吹抜けの位置。
スキップ1はふたつの空間の間に吹抜けを作り、階段はご飯を食べる場所に。
スキップ2はくつろぐ場所の真上に吹抜けを設けて、階段を中央に配置しました。

これは建物の空間構成上の考え方からそれぞれの特徴を活かせるようにした結果ですが、
スキップ1は内部空間全体をひとつの大きなホールと捉えています。
全体としての開放感や楽しさといったものを出しています。
室内のどこにいても楽しいし、面白い。視覚的な景色の変化を楽しめる。

対してスキップ2は内部で一番大きな場所である「くつろぐ場所」と移動空間である
「廊下と階段」をくっつけて開放感を出し、それ以外のご飯を食べる場所やキッチン
そして個室(3室+1)といった小スペースを周りに配置するように構成しています。
廊下と階段をただの移動空間にするのではなく、ワクワクへのアプローチとして捉え
物質的移動とともにメンタル的な移動を意図しています。


  

  
左2段がスキップ2    右2段がスキップ1(全体がホールのようにつながり、大きい空間)



しかし、どちらともに共通するのは全ての意識は中央(中心)に向かう。ということです。
スキップ1にしても2にしてもは生活の中で意識は中央の吹抜けや渡り廊下に向かうはずです。
意識が向かうというのは大げさかもしれませんが、意識、無意識にかかわらず
それぞれ中心にあるものが生活スタイルの一部に溶け込むといったものになります。
わたしなりにはスキップ1は玄人が好むだろうと思います。
スキップ2の方が空間として分かりやすい。

どの場所にいても心が揺れ動くような、好きな音楽を聴いているような
そんな豊かな時間が流れて欲しいと思い、計画したのがこのスキップシリーズです。

なによりもこの計画が画期的なのはこれが注文住宅としてある1世帯のために作られたのではなく、
地場の建売メーカーの建売住宅として多くの人に向けて作られたという点です。
住まう人に合わせて空間を作るのではなく、ある住まいのコンセプトを持って作られた空間を
気に入ってもらい、理解して住まう。

そこにはわたしなりの考えがありました。

世界はモノであふれています。そして住まいは「モノ=収納」で支配されています。
それによってすべてが単一的で画一的です。余白は消されてしまいます。

ある人は吹抜けが無駄だと言います。ある人は収納が少ないと言います。
ある人は段差が邪魔だと言います。ある人は費用がかかると言います。

しかし我々はこのコロナ禍によって学びました。
我々が物知り顔で価値観と呼んでいるものは、
すべての膨大で広大さのほんの一部であることを。
そしてそのほんの一部のものは簡単に崩れてしまうことを。
利便性と経済性だけが価値ではないはずです。



  



人類をモノの支配から解放します。
リズムが自由に揺蕩うように、メロディーが余白を楽しむように。
人は楽しむために生きています。生きていかなければなりません。
けれども楽しむために苦しみます。つらい思いをします。
それでもその苦しみを乗り越えていきます。

乗り越えた先にわたしたちは自由であり続けます。
ならば住まいも自由であり続けなければなりません。

子供たちは喜びをスキップで表現します。
楽しい時は誰もがスキップします。
逃れられない日常の余白をスキップで軽やかに飛び越えます。
スキップ1とスキップ2は楽しい住まいです。
住まいが楽しんでいます。だから人も楽しいのです。  



・・・なのに建築家の自宅はモノで溢れています。
モノに完全に支配されています。
まっすぐまともに歩けません。積みあがったモノにぶつかり、崩れ落ちます。
斜に構えて歩きます。
誰かぼくを解放してください。僕を助けてください。  中島崚真