FIVE COLOR[S]INK ⼀級建築⼠事務所|⼤阪市⻄区北堀江

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【ナカシマリョウマのくだらない話】

さらば 大阪の文金

悲しくて
悲しくて
とてもやりきれない
この限りないむなしさの
救いはないのだろうか

今日は3月31日 今年度最後の日。
最終日だからなのか、今日はいろんな情報が交錯した。

嬉しいことや寂しいこと。耳の痛いこと。そして悲しいこと。

霧雨煙る生温い風の中、仕事で天満橋へ行った。
久しぶりに文金に行って大好きなヘレカツ定食でも食べようかなと思い
OMMビル地下に足を運んだが、、なんと跡形もなく・・・(゚Д゚;)

2,3年行ってない間になくなっていた。( ノД`)シクシク…
なくなるんだったらもう一度行きたかった。ヘレカツを食べたかった。
大盛りの白米にヤッコと漬物、お味噌汁そしてヘレカツ。

テレビドラマで吉田鋼太郎さん演じるお父さんの常連の中華屋さんが閉店する時、
最後の日に行列が出来ていて、最後ということに嘆いてる他の客に
「嘆くくらいなら、もっと普段から来てたらよかったんだよ!」と
聞こえるように大きな声で独り言を言っていたが、まさにその通りだ。
わたしは行かなかったのだ。ヘレカツを食べたいと今更叫んでも遅いのだ。

文金のおやじは見るからに昭和の頑固おやじだった。
たぶん家族経営で奥さんとか子どもたちとかに
偉そうだったし、つっけんどんで口うるさい感じであった。

ただ、一度だけ笑顔を見たことがあった。
もう15年ほど前になると思うが、仕事でトラブルが続いたときがあった。
さすがのわたしも気落ちして大阪の街を「会社に帰りたくないな」と思いつつ、
冬枯れの乾いた風の中、うつむき加減でトボトボと歩いていた。
そんなときふと文金のヘレカツが食べたくなった。
ヘレカツに癒されたくなったのだ。

その足で天満橋に向かい文金に入った。もちろんヘレカツ定食を注文。
カウンターに座ったから目の前でおやじがヘレを揚げる。

ヘレカツが揚がると同時に白米とヤッコが奥からお盆に乗ってやってくる。
お味噌汁はおやじがドンっと目の前に置く。
そして揚げたてのヘレカツが美味しそうに湯気をあげ
お皿にキャベツと仲良く寄り添って出てくるのである。

と思ったら、おやじが目の前にきてカウンター越しに
手を伸ばしてきた。。。。えっ(゚д゚)!
頭叩かれるんかなと思って一瞬身構えたら
おやじはわたしの頭に乗っていた落ち葉をそっと取ってくれた。

取った落ち葉を見せながらおやじはやさしく笑った。
気落ちしていたわたしはヘレカツとそして思いもかけず
頑固おやじの優しい笑顔に癒され救われた。

目の前を乾いた風が身を切るように通り過ぎた。

おやじと文金はもうそこにはないのだ。
悲しさがこみ上げてくる。
もうないのだ。と。
あのヘレカツを食べることはもう二度と出来ないのだ。
寂しさが頭を取り巻く。
嘆いても仕方がない。憤ってもヘレカツは現れない。
分かってはいるがめまいを覚えたわたしは妄想の世界に身を寄せたかった。

迷妄に襲われるわたしはよろめき乍らもそれでもなんとか抗った。
わたしは前を向いて歩かなければならないのだ。
後悔しないように、、後悔する前に行動に移さなければならないのだと。
一枚のヘレカツが教えてくれたのだ。

あのときどうしてしなかったのだろとか
あのときどうしてもっと考えなかったのだろとか
嘆く前に行動しなければならない。そう教わったのだ。

もうおやじと文金はない。それが事実なのだ。
事実のその先にどんな結果が待っていようと
新たな答えを見つけにいかなければならないのだ。

新たな季節がはじまる。
これから暖かい春の風が街を駆け抜けていくだろう。
善なる祈りの中でその風を感じ、そして顔をあげよ。

答えは風に吹かれている。        中島崚真